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携帯用消毒液容器で見落としがちな「水蒸気バリア」の話

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手指消毒
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今年は、消毒液容器のお問合せをたくさん頂いています。

弊社は小型容器の生産が多いため、携帯用小型容器のお問合せが多いです。

インターネットをみても携帯用容器に関する情報であふれています。

アルコール(エタノール)と容器の相性(対内容物適性)に関する情報が多いようです。

さて、実際によくあるお問合せで

既に商品化されている消毒液の処方は変更せずに、サイズダウンして携帯用を発売したいというご希望があります。

具体的には、「500ml容量で既に製品化している商品を、20ml程度の携帯用で発売したい。」

というような場合です。

 

こうした場合、既に製品化されている500mlと同様の素材の容器であれば内容物に対する適性もあるので問題ない。

とお考になる方が多いです。

もちろん、内容物と容器の相性(対内容物適性)も大事です。

しかし消毒液容器の場合、意外と見落とされがちなのが、「水蒸気バリア」性能です。

商品価値を損なう場合もありますので、注意が必要です。どういうことでしょうか?

容器に求められる性能

容器を選ぶにあたっては、各社様とも様々な事をご検討されている事と思います。

こまかく挙げ始めたらキリがありませんが、よくお問合せを頂く項目は以下のようなものです


  • 遮光性や気体などを遮断し中身を保護する機能
  • 落下や摩擦などに耐える物理的な強度
  • 耐候性や耐熱性など、様々な使用条件に対する安定性
  • 透明性や印刷適性など商品価値を高める外観
  • 容器を使用して製品を加工する際の作業性
  • 携帯性や開封のしやすさなどの利便性
  • 使用後のリサイクル性
  • 容器の生産コストなどの経済性

 

上記の中でも、バリア性に関するお問合せは、対内容物適性や強度とともに最も多いお問合せの一つです。

たとえば遮光性や、酸素バリア性 などは比較的良く話題にでます。

一方で水蒸気バリアについてはあまり話題になりません。

しかし消毒液に関しては、水蒸気バリア=「水分の減少」にも注意が必要です。消毒の効果に関係するからです。

消毒液の濃度と殺菌効果について

アルコール(エタノール)など、なんとなく100%にちかい高濃度の方が殺菌効果は高いと思いがちです。

しかし実際は、80V/V%の前後の濃度の殺菌力が最も強くなるようです。

 

新型インフルエンザウイルスの手の消毒にはもっぱらアルコール(エタノール)が使われます。

濃度による殺菌効果の違いですが、一般に「消毒用エタノール」といわれる80v/v%くらいの濃度の殺菌力が最も強く、50v/v%以下になると、十分な消毒効果は期待できません。

引用元:アルコール消毒薬について(静岡県薬剤師会)

 

数値については諸説あるようです。

 

エタノールの殺菌力の最適濃度は大体 50~80%の間が適当とされている。エタノールの殺菌 力の最適濃度については、種々の実験や諸説があり、その試験方法や条件が必ずしも一定し ていない。Price の報告によれば、10~20%の低濃度では 10 分間以上作用させないと効力は なく、しだいに濃度を増すにつれ殺菌力は強くなり、60~90%の間では最初の数秒間で強力 に殺菌するが、90%以上では作用が弱くなることを示している。従って、エタノールの濃度 約 70%(重量%)は最適濃度と称してよく、この濃度においては皮膚に対して拡散及び揮散 性も適度で、表皮を損傷することもなく、脂質を溶解し去ることもなく無害である。

引用元:消毒剤マニュアル(発行:健栄製薬株式会社) P17より

 

いずれにしても、濃度と殺菌効果には密接な関係があるようです。

では、流通している間に、アルコール(エタノール)の濃度が変化するような事はあるでしょうか?

水分が容器から抜けてしまう事(水蒸気透過)で濃度の変化が起こる事はありえます。

水蒸気バリア性

一般的に知られているように、樹脂容器では 程度の差はありますが内容物の減少は必ずおこります。

水分の減少は 水蒸気透過量(Q) を求める以下の計算式で求める事ができます。

Q=K×(表面積)÷(容器の厚み)×(時間)×(容器の内外の圧力の差)
K=容器の材質によって決まる固有の値(定数)です

例えば弊社が扱っている代表的な素材をこの数値の小さい方から並べると

PP、PE<PET<PC<PS、PA6

という順番になります。

 

つまり、素材や環境、保存期間が同一だとすると

  • 表面積が大きければ、より多くの水分(水蒸気)が透過します。
  • 容器の肉厚が厚くなれば、水分(水蒸気)が透過しにくくなります。

内容物の安定性という面から言えば、内容量と表面積の比率も関係してきます。

ですからたとえ同じ素材でも、形状や容量が変わった場合、水分(水蒸気)バリアの評価が改めて必要になる場合もあります。

バリア性の向上対策

より一層の水分(水蒸気)バリア性能を求めたい。

こうした場合、ハイバリア容器(多層容器や内面コーティング)を採用できれば良いのですが、コストアップになります。そもそもメーカーが限られてしまい、生産余力もない場合が多いです。

また素材についても変更できない場合も多いです。

このため、多くの場合オーソドックスですが 容器の肉厚を厚くするという方法をとることになります。

しかし、ブロー成形品の場合、部位によって肉厚は異なります。

ですから全体の肉厚のバラツキを小さくした上で、狙いの肉厚を設定する必要があります。

弊社では肉厚のバラツキをより小さくする為の 最適な成形条件を設定することが可能です。

そうすることで材料使用量をおさえつつ、お客様の要求品質をクリアしています。

まとめ

このように特に消毒液容器の選定では 水蒸気バリア 性能も重要になります。

  • 内容物との相性(対内容物適性) とともに
  • 水蒸気バリア性

の観点からのご評価もご検討下さい。

弊社では消毒液容器分野でも多数ご採用を頂いております。携帯用消毒液をご検討の際は是非お問合せ下さい。

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